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■コミュニケーションは組織のあり方■~われわれのなかのもう一人へ~

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ドラッカーは、目標管理を一つの例としてあげた上で、 経験共有こそがコミュニケーションの成立には不可欠だと言明した。 組織の中でのコミュニケーションは、他人に対して 何かを伝えようとするものではない。 同じ組織に働く人達は、経験の共有を通して価値観や知覚を相互理解し、 ”私とあなた”ではなく”われわれ”となる。 このことにより、コミュニケーションは組織の有効性を作り上げていくのだ。 人体における神経伝達物質のごとく、組織にとってコミュニケーションは その生命維持装置として働くと言える。 「コミュニケーションは、私からあなたへ伝達するものではない。  それは、われわれのなかの一人から、  われわれのなかのもう一人へ伝達するものである。  組織において、コミュニケーションは単なる手段ではない。  それは組織のあり方である。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■コミュニケーションの前提となるもの■~目標管理は経験共有~

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ドラッカーは、組織のコミュニケーションにおいて、 そこに存在するギャップの解消が重要課題であるとした。 続いて”目標管理”こそが有効なコミュニケーションの 前提となるものとする。 ”目標管理”では、部下は上司に対して、自らの部門に対して 自ら果たすべき貢献について明らかにしなければならない。 しかし部下が明らかにした考えが、上司の期待どおりであることはまれである。 上司と部下の知覚が違っているのだ。そして、それが現実である。 目標管理の最大の目的は、この上司と部下の知覚の仕方の違いを明らかにすることにある。 目標管理という経験を通して、上司と部下は相互に知覚の違いを理解するのだ。 「同じ事実を違ったように見ていることを互いに知ること自体が、  コミュニケーションである。  コミュニケーションの受け手たる部下は、  目標管理によって、他の方法ではできない経験を持つ。  この経験から上司を理解する。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■コミュニケーション・ギャップの解消■~耳を傾けることはスタートにすぎない。~

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ドラッカーは、「何を言いたいか」に焦点を合わせた ”上から下へ”のコミュニケーションは成立しないとした。 そして、上に立つ者は部下に理解させたいことからではなく、 部下が知りたがっていること、興味を持っていることに、 耳を傾けなければならないと指摘する。 耳を傾けることが、コミュニケーションの前提であるのだ。 しかし、下からの話に耳を傾けるだけでは 効果的なコミュニケーションは実現しないとする。 なぜか。 耳を傾けることは、上の者が下の者の言うことを理解して 初めて有効となる。 そして、そのためには、下の者が上の者に理解をさせるための コミュニケーションの能力があることが前提となる。 しかしこの両者の間には、経験や能力や知識や価値などの差、 つまり知覚にギャップが存在する。 このギャップがコミュニケーションを困難にしているのだ。 大切なことは、このコミュニケーション・ギャップの解消である。 にも拘らず、伝え手は上手に伝えようと多くの情報を流して、 かえってこのギャップの拡大につなげていると指摘する。 「情報が多くなるほど、  効果的かつ機能的なコミュニケーションが必要になる。  情報が多くなるほど、  コミュニケーション・ギャップは縮小するどころか、  かえって拡大する。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■”上から下へ”のコミュニケーション■~「何を言いたいか」は、伝え手の意図~

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ドラッカーはコミュニケーションには4つの原則があり、 完全なコミュニケーションは、経験の共有であるとした。 次は、組織内のコミュニケーションについてである。 まず、「何を言いたいか」に焦点を合わせた、 ”上から下へ”のコミュニケーションは成立しないとする。 なぜか。 それは「何を言いたいか」は、伝え手の意図であり、 受け手の存在を考慮していないからである。 コミュニケーションを成立させる者は伝え手でない。 ”コミュニケーションを成立させるものは、受け手”なのである。 しかし、伝え手は、伝えるべきことをはっきりと語ったたり、 書いたりすることは必要である。 しかし、伝え方以前に、何を伝えるかが大きな問題なのだ。 いかに上手なスピーチであっても、相手の知覚に応じたものでなければ 会話は成立しない。 「どのように話すかという問題は、  何を話すかという問題が解決されて初めて意味を持つ。  どのように上手に話しても、  一方的に話したのでは話は通じない。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■コミュニケーションと情報は別物■~経験の共有こそ、完全なコミュニケーション~

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ミュニケーションの持つ4つの原則。 その4 ◆コミュニケーションは情報ではない。 ドラッカーは、コミュニケーションと情報は別物であるが依存関係はあるとする。 どいう意味なのか。 コミュニケーションについては、それが知覚の対象であるということについては、 既述のとおり。 では情報というものをどうとらえればいいのか。 まず、情報は論理の対象であり、形式を持った記号であるとする。 情報は記号であるので、それ自体に意味を持たない。 ”情報には人間はいない。人間的な要素はない。” むしろ情報には、感情、価値、期待、知覚といった、 人間としての”思い”が含まれないことが情報の有効性、 信頼性を高めることとなる。 しかし、情報は記号であるので、受け手が記号の意味やルールを知らなければ、 情報を受け取ることができない。 そのために、あらかじめその記号の意味について、発信者と受信者が 共通の認識を持っておく必要がある。 そこに、コミュニケーションの存在がある。 情報が記号としての役目を果たすために、コミュニケーションを必要とするのだ しかしコミュニケーションは、必ずしも情報を必要としない。 あらかじめ、どのような情報もない上での経験の共有は、完全なコミュニケーションをもたらす。 コミュニケーションにとって重要なものは、知覚であって情報ではないのである。。 「情報とは記号である。  情報の受け手が記号の意味を知らされなければ、  情報は使われるどころか受け取られることもない。  情報の送り手と受け手の間に、あらかじめなんらかの了解、  コミュニケーションが存在しなければならない。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■コミュニケーションは要求■~全面降伏を要求する。~

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ミュニケーションの持つ4つの原則。 その3 ◆コミュニケーションは要求である。 ドラッカーは、コミュニケーションは要求であるとする。 コミュニケーションは受け手に何かを要求する。 どういう意味か? 発信者がコミュニケーションを行うとき、 そこには何らかの動機、目的が存在する。 例えば、新しく開発した商品の売り上げを拡大したい営業部長は、 部下にはっぱをかける。 ”はっぱをかける。”というコミニケーションである。 このコミニケーションは、部下に営業成績を上げる活動を期待するものである。 部下は組織人である限り、企業の目的を知り、目標を達成することを自らに求める。 そして、営業活動にも力を入れ、成績を上げたいとの思いを持っている。 しかし、部下がその商品を理解していなかったり、 営業手法に疑問を持ったり、はたまた会社理念や方針に疑問を持ったりしていると、 その部下の活動は成果に結びつくことはない。 部下の価値観、欲求、目的に合致しないのである。 営業部長が次に行うべきコミニケーションは、部下のその思いを知ることである。 その上で、部下の思いに合致するような組織改善を行うことができれば 部下は強力なパフォーマンスを発揮できるであろう。 しかし、それができないのであれば、強い動機づけで部下の思いを変化させるという コミニケーションを行う必要がある。 しかしドラッカーは、人の心は、このような変化に対し激しく抵抗するとする。 ”受け手の心を転向させることを目的とするコミュニケーションは、受け手に全面降伏を要求する。” 「コミュニケーションは、それが受け手の  価値観、欲求、目的に合致するとき強力となる。  逆に、それらのものに合致しないとき、  まったく受けつけられないか抵抗される。」 (6章 マネジメントの技能  28 コミュニケーション)     

■コミュニケーションは期待■~見もしなければ聞きもしない。~

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コミュニケーションの持つ4つの原則。 その2 ◆コミュニケーションは期待である。 ドラッカーはまず、”コミュニケーションは知覚である。”とした 。 そして、人は期待しているものだけを知覚するものとする。 期待しているものをだけを見て、期待しているものだけを聞くのだ 。 そして、期待していないものは受け付けず、無視し、まちがって見 、まちがって聞き、さらに自分が期待していたものと同じと思いこ む。 ”人の心は、期待していないものを知覚することに対して抵抗し、 期待するものを知覚できないことに対しても抵抗する。” 入社10年、そろそろ管理職昇進を期待するA君。 そんな矢先人事部長から呼び出しがあり、部長室に行った。 A君が“期待しているもの”は昇進である。 しかし部長からは、職位は現状のままでの地方営業所への一方的な 転勤命令であった。 A君が”期待していないもの”であった。 A君は自己の能力が劣っており、会社の中で評価に値しない存在で はないかと考える。 当然モチベーションはどん底に落ちる。 これでは、部長のコミュニケーションの失敗である。 転勤がテーマであるにも拘らず、A君は昇進の話であると、まちが って期待することとなった。 部長はA君が昇進の時期でありそのことを期待していることを知っ ていた。 部長は、A君の期待を裏切る転勤の話をする前に、A君の昇進を含 めたキャリアパスを話題にすべきであった。 期待に反しているかもしれないことをまちがいなく伝えることによ り、ショックを和らげる必要があったのだ。 「受け手が期待しているものを知ることなく、コミュニケーション を行うことはできない。  期待するものを知って、初めてその期待を利用することができる 。」 (6章 マネジメントの技能 28 コミュニケーション)