■知識が意味しないもの■~効用を与えるものは、テクネ~
∬ちょこっと、ピーター.ドラッカー∬
プラトンの時代以降、知識の役割についての理論は、
二つしか存在しなかった。
一つは、ソクラテスが示した、自己認識、つまり自らの知的、
道徳的、精神的成長にあるとしたもの。
もう一つは、プロタゴラスの、何をいかに言うかを知ることにあるとしたもの。
このように、知識が意味するものは異なっていたが、
知識が意味しないものについては完全な一致があった。
知識は、行動につながらず、
なにものも生み出すことはないということである。
それらをなし得るものは、技能(テクネ)だった。
テクネとは、特定分野に関する処方箋であり、
例えば、ギリシャーシチリア航路について船長が知っていることは、
他の分野に応用できなかった。
そして、テクネは、言葉や文字では説明できず、
身をもって示すものを、徒弟となり、
経験を積むことでしか学ぶことはできなかった。
”イギリスではクラフト(技能)という言葉がなく、
ミステリー(秘伝)なる言葉を使っていた。”
「知識は、行為に関わるものではなかった。
知識は、効用ではなかった。
効用を与えるものは、知識ではなかった。
それは技能だった。」
~『プロフェッショナルの条件』
(1章 ポスト資本主義社会への転換)
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