■新たな秩序の誕生■~スピードゆえの傷~
∬ちょこっと、ピーター.ドラッカー∬
産業革命と資本主義に対する抵抗は世界中で見られた。
この前例のない転換の速度が、
新たな秩序の誕生をめぐる社会的緊張と対立をもたらした。
しかし工場労働者が、工業化以前よりも生活水準が低く、
辛い生活を送らざるをえなかったという通念は、
事実に反することを知っている。
生活は辛かったが、
田舎社会の底辺にとどまるよりも楽であり、
以前よりも高い生活水準を手に入れた。
工業化は、マルクスのいう窮乏化ではなく、
物質的な改善を意味した。
その変化のスピードゆえの傷は避けられなかったのだ。
マルクスによれば、新しい階級としてのプロレタリアは、
疎外され搾取され続けるはずだった。
この予言が間違っていたことは明らかであるが、
それは今だから言えることにすぎない。
当時多くに知識人は、資本主義の矛盾についての
マルクスの分析を受け入れていた。
「工業化は最初から、マルクスのいう窮乏化ではなく、
物質的な改善を意味した。
変化のスピードは速かった。
したがって、その変化のスピードゆえの傷は避けられなかった。」
~『プロフェッショナルの条件』
(1章 ポスト資本主義社会への転換)
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