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■社会的イノベーション■~機会に転換すれば、もはや問題ではない。~

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ドラッカーは社会の問題をイノベーション、すなわち新事業に転換することは、 組織の機能であるとした。 しかし、イノベーションは技術面のみではない。 社会の問題を事業上の機会に転換するための最大の機会は、 社会的なイノベーションにある。 その例として19世紀の自動車メーカのフォードをとりあげている。 当時高い失業率、低い賃金、厳しい労働など、労働環境は 社会の問題として存在していた。 フォードも離職者は多く、1万人を確保するためには 6万人を雇わなければならないほどだった。 そこで、賃金を三倍にして雇用を確保するという対策を実施した結果、 退職者はほとんどいなくなった。 そして、このことにより労働者のコスト意識や生産性が向上し 大幅なコスト節減が達成され、一台当たりの利益を増大させることができた。 賃金の思い切った引き上げという負担増が、結果的に労働コストの削減に結び付いたのだ。 これは、社会的なイノベーションとして、社会問題を解決した一つの例であるが、 ドラッカーは、あらゆる問題が、このように機会に転換できるわけではないとする。 「社会の問題は、事業上の機会に転換すれば、もはや問題ではない。  しかしそうできない問題は、社会にとって、  たとえ退化病とまではいかなくとも、慢性病となる。  あらゆる問題が、業績をもたらす機会に転換できるわけではない。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題) Amazon.co.jp ウィジェット

■問題への挑戦は機会の源泉■~社会を退化させる病である。~

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ドラッカーは組織が社会に与える影響の除去は、 社会に対する責任ではなく、自らの組織に対する責任であるとした。 次は、社会の問題である。 ドラッカーは社会の問題は、社会自体が問題を防止したり、 解決したりする機能を果たせない結果であるとする。 そしてそれは、社会の進歩を妨げる要因である。 組織は社会の一員として、その仕組みの中で存在している。 なので、社会が問題に対する機能を果たせないとなると、 組織、特に企業のマネジメントがその問題に挑戦しなければならない。 そして、その挑戦が企業にとって、機会の源泉となる。 社会の問題を解決することを事業に変えて自らの利益とすることこそ、 企業の機能である。 ”変化をイノベーションすなわち新事業に転換することは、組織の機能である。” 「社会の問題は、社会の機能不全であり、  社会を退化させる病である。  それは組織、特に企業のマネジメントにとっての挑戦である。  機会の源泉である。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題) Amazon.co.jp ウィジェット

■正しい規制が必要■~貪欲な者、ばかな者が利益を得る。~

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ドラッカーは組織が社会に与える影響の除去は、 常に事業上の機会となるよう努力する必要があるとした。 しかしそれは、社会がコストとして負担していたものを、 自らが負担するこを意味し、組織にとって大きなダメージである。 これは、競業他社が同じルールを受け入れないかぎり、競争上不利になる。 なので、競業他社に同一のルールを受け入れさせるための、 公的措置としての政府規制が必要となる。 例えば、自動車業界における、速度制限や排ガス規制、メディアにおける 視聴規制などでしょう。 こいった規制がなければ、組織は社会から責任を問われると共に、 その間”良識のない者、貪欲な者、ばかな者、騙す者が利益を得る”ことになる。 規制がないから悪影響があっても売れるうちに売っちゃえって組織なんでしょう。 最終的には企業の悪事とされる。 影響を除去するためには、資源、エネルギー、資金が必要である。 なので、その効果と費用のバランスをとるための意思決定が必要となる。 トレードオフ(相殺)である。 公的機関や団体などは、このトレードオフすべき内容を理解し 判断すべき情報を持っていないので、彼らには正しい規制のための 意思決定ができない。 だからこそ、この意思決定の責任は、組織のマネジメントにあるのだ。 ドラッカーは、それは、社会に対する責任ではなく、 自らの組織に対する責任であるとする。 「影響を事業上の機会にすることが理想である。 不可能ならば、最適のトレードオフをもたらす規制案をつくり、 公共の場における論議を促進し、 最善の規制を実現するよう働きかけることが、 マネジメントの責任である。 」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題) Amazon.co.jp ウィジェット

■影響の除去を機会とする。■~自ら処理しなければならない。~

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ドラッカーは組織が社会に与える影響は、自らその影響を処理しなければならず、 その最善の方法は、影響の除去をそのまま収益事業にすることであるとした。 ドラッカーはその実例を示す。 アメリカの大手化学会社ダウ・ケミカルは、大気汚染と水質汚染は 社会への悪影響と認識し、絶対に除去することを決意した。 そして社会がこれらの汚染を環境問題として捉えるはるか以前に、 工場からの汚染をゼロにすることを決定した。 さらに同社は、除去した汚染物質から新製品を開発し、用途と市場を 創造して成功した。                    ドラッカーは、影響の除去は、常に事業上の機会とすべく 試みなければならないとする。 「環境が問題にされるはるか前に、  工場からの汚染をゼロにすることを決定した。  しかも同社は、除去した汚染物質から新製品を開発し、  用途と市場を体系的に創造していった。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題)

■唯一の優れた解決■~組織は、影響を処理しなければならない。~

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組織は、自らが社会に与える影響は、故意であろうとなかろうと、 その責任を持つことが原則である。 そして組織は、その影響を処理しなければならない。 そのためにはまず、その処理の中身を明らかにしなければならない。 目標は、組織の目的や使命の達成に不可欠でないものは、 最小限にすること、できればなくすことである。 しかし、組織は活動を中止することはできない。 したがって、活動を継続しながらその影響を除去するために、 体系的に取り組みことが必要となる。 ドラッカーは最善のアプローチは、影響の除去をそのまま収益事業にすることであるとする。 「影響の原因となっている活動そのものを中止して影響をなくすことが できるならば、それが最善の答えである。 唯一の優れた解決である。 だがほとんどの場合、活動を中止することはできない。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題)

■自らが社会に与える影響への責任■~高い代価を払わせる。~

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組織の社会的責任は、自らの活動から生まれるものと 社会の問題として生ずるもの、この二つの領域において生ずる。 そして、自らが社会に与える影響は、故意であろうとなかろうと、 組織にその責任がある。これが原則であるとする。 組織は、その影響を取り除き、問題を解決するために 責任ある行動をとらなければならない。 そうしなければ、社会からの報復を受けることになる。 ドラッカーは、一つの例として1940~50年代の アメリカの自動車会社フォードについて触れる。 フォードは車の安全性向上のためにシートベルトつきの車を売り出した。 しかし、販売不振のため、まもなく製造を中止した。 それから15年後、社会に安全意識が広がると、自動車メーカーは、 ”安全車という考えまで捨てた死の商人”との厳しい批判を受けるようになった。 その結果、市民保護を超えた、メーカーバッシングともいえる法律が多く作られることとなった。 責任放棄に対して、高い代価を支払わなければならない形となった。 「組織が社会に与える影響には、いかなる疑いの余地もなく、  その組織のマネジメントに責任がある。  世論が反対していないというだけでは言いわけにはならない。  遅かれ早かれ、社会は、そのような影響を社会の秩序に対する攻撃と見なす。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題)

■不健全な社会では機能しえない■~組織は社会の機関~

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組織の社会的責任の問題は、自らの活動に関するものと 活動とは関わりなく社会の問題として生ずる影響、 この二つの領域において生ずる。 ドラッカーは、組織が社会に及ぼす影響は、組織の目的に付随して 起こるもので、多くの場合避けることのできない副産物であるとした。 一方の社会自体の問題は、組織とその活動の影響からではなく、 社会自体の機能不全から起こるとする。 地域間格差、再生エネルギー、食糧自足、高齢者とヘルスケア、 労働力不足、教育の荒廃、、、枚挙にいとまがない。 これらは、社会の様々な環境が生み出した問題である。 しかしこれらの問題は、社会自体が生み出したにも関わらず、 社会の機能では解決できない問題である。 社会の機能不全である。 組織は、社会の仕組みの中でのみ存在する社会の機関である。 なので、社会の健康は、組織のマネジメントにとっては重要な問題のだ。 「社会の問題は組織にとって重大な関心事たらざるをえない。  なぜなら、健全な企業、健全な大学、健全な病院は、  不健全な社会では機能しえないからである。  マネジメントが社会の病気をつくったわけではない。  しかし社会の健康は、マネジメントにとって必要である。」 ~P.F.ドラッカー「マネジメント」 (第4章 社会的責任 16 社会的影響と社会の問題)