■抽象的なものへの依存■~多角化と複雑さへの信奉~
ドラッカーは、不適切な規模への対応策としての多角化が成功する条件は、
市場、技術、価値観が一致することであるとする。
そもそも組織は、マネジメントできなければ有効な活動はできない。
多角化していないほど、組織は単純で明快であり、マネジメントしやすい。
組織の全員が自らの仕事を理解し、自らの仕事と全体の業績との関係を知り、
活動に集中できるからである。
しかし、シンプルな組織でもマネジメントがうまくできなければ、業績も上がらなくなる。
「うまくいかなくなりそうなものは、いずれうまくいかなくなる」という、
マーフィの法則どおりである。
事業にとって多角化は、複雑さを生み出す原因となる。
そして、その複雑さが困難な問題を生み出すこととなり、
「何かがうまくいかなくなると、すべてがうまくいかなくなる。しかも同時に」
という、ドラッカーの法則と呼ぶべきものが働くこととなる。
では、組織がマネジメントできなくなるという複雑さの限界とはなにか。
それは、トップマネジメントが事業とその現実の姿、
つまり働く人、経営環境、顧客、技術を直接、見て、知って、
理解することができなくなり、報告、数字、データなど
抽象的なものに依存するようになったときだとする。
マネジメントは、自らの現状を、机上で他人から抽象的に伝え聞くということではだめで、
自らが具体的に把握できなければ成立しないんですね。
「『何かがうまくいかなくなると、
すべてがうまくいかなくなる。しかも同時に』
組織には、もはやマネジメントできなくなるという
複雑さの限界がある。」
~P.F.ドラッカー「マネジメント」
(第9章 マネジメントの戦略 41 多角化のマネジメント)
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